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真治は、明かりも点けない暗い部屋で、膝を抱えて震えていた。
俺は、なんてことをしてしまったんだ。
身体の底から、恐怖が湧いてくる。
榎田真治。社名を聞けば知らないものはいないというほど、大手の証券会社に勤めているサラリーマンだ。
一流大学を卒業して今の会社に勤めたものの、人付き合いが苦手な真治は、会社での人間関係がうまくいっていなかった。
友達と呼べるような存在もいないので、真治はいつも孤独だった。
一人ぽっちは嫌だ。
そうは思っても、面と向かって人と接するのは苦手だ。昔からそうだった。
幼い頃から両親に洗脳されて、勉強ばかりしてきた真治は、クラスメイトを友達ではなく、ライバルとしてしか見てこなかった。
それだから、これまで、まともに人と付き合ったこともなければ、向き合ったこともない。友達が出来ないのは、性格のだけではなかった。
社会人になってから、それでは駄目だと思い知らされたものの、なんとかしたくても、自分ではどうしようもなかった。
二十年以上も培ってきものは、なかなか直ぐには変えれない。
そんな真治を救ってくれたのが、フェイスブックやツイッターだった。フェイスブックやツイッターは、顔も知らない相手と親しくできる。
顔を見て話をすることもないので、嘘を書いても悟られることはないし、悩みを打ち明けても恥ずかしくもない。
スマホの中でだけ、真治は勇気を持てた。スマホのお蔭で、真治は孤独ではなくなった。
その代償として、仕事以外の全ての時間を、スマホに費やすことになった。
始めは、人と会話するのが楽しかった。
フェイスブックやツイッターを会話と言って良いものかは微妙なところだが、真治にとっては、これまで生きてきた中で、これほど人と話したことはない。
お蔭で、随分と孤独な寂しさが癒されたものである。そんな真治だから、暇さえあれば、見知らぬ人と交流を重ねていた。
生身の人間を相手にする勇気のない真治は、顔も見たことのない人達ばかりだが、交流している人々を本当の友達と思い込んでいる。
そうやってのめり込んでいくうちに、今では仲間外れにされるのが怖くて、スマホから目が離せなくなっていた。
少しでも返事が遅れると、のけ者にされることがあるからだ。
そんなのが友達といえないのは明白だが、誰でもいいから繋がりを求めている真治には、仲間外れほど恐ろしいものはない。
今では、風呂は二日に一度、手短にシャワーで済まし、眠る時間も削っている。歩いている時も、電車に乗っている時も、食事中でも、トイレの中でも、いつでもどこでもスマホを手放さない。いや、手放せない。
中毒というより、スマホの奴隷だった。
もはや真治は、ご主人様のスマホなしでは、生きていけなくなっていた。
これまでの孤独な寂しさを思うと、たとえ寝る時間を削っても、ゆっくりと風呂に入れなくても、スマホの奴隷になっている方がましだった。
もう、あの頃の孤独は味わいたくなかった。
そんな真治に、悲劇が訪れた。
今日の夕方、帰宅途中の新宿駅で、いつものごとくご主人様のスマホに仕えていて、電車待ちをしていた女性にぶつかってしまったのだ。
運悪く、その女性はホームに転落してしまった。
女性の悲鳴に驚いて、真治はその場から慌てて逃げた。文句を言われるのが怖かったのもある。
そのまま改札を出て、遠回りして、違う路線で帰宅した。
大丈夫だ、大したことはない。ホームから落ちたって、大した怪我をするわけはない。せいぜい足を挫くくらいだろう。それに、俺が逃げたって、誰かが助けてくれているさ。
真治はスマホに夢中で、電車の到着を知らせるアナウンスが聞こえていなかった。だから、ただホームへ落ちたとしか思っていなかった。夢中で逃げ去ったので、すぐに上がった人々の悲鳴も聞いていない。
大丈夫だ。
繰り返し胸の内で呟いているうちに、真治の心は落ち着いてきた。
明かりを点け、それからテレビを点けた。ちょうどニュースをやっていた。
真治は愕然とした。
画面には『ついに死者が! 歩きスマホの男にぶつかられた女性がホームに転落、そこに電車が』というテロップが映し出されていたのだ。
場所は新宿駅。時間は、真治がぶつかった時間だ。
俺だ。
ついに死者って?
あの女性は死んだのか?
真治は真っ青な顔で、アナウンサーの声を聴いた。
電車待ちしていた女性が歩きスマホの若い男にぶつかられ、ホームに転落したこと。ぶつかった男は、女性を助けることもせず、即座に逃げ去ったこと。運悪く、電車が到着する直前に転落したため、助ける暇もなく、電車の下敷きになったこと。
一緒にいた友達の証言を交えながら、アナウンサーは現場の新宿駅から、痛々しい顔でニュースを伝えている。
嘘だっ!
思わず叫んだ。目の前が真っ暗になる。
しかし、真治にとっての悲劇は、これだけでは終わらなかった。
その後のアナウンサーの言葉が、さらに真治を、地獄の底に突き落とすことになる。
歩きスマホの男性にぶつかられて、電車の到着間際に線路に突き落とされて亡くなった女性。早くに両親を亡くし、その姉を親代わりとして生きてきた琴音は、その名から逃げ去った犯人に復讐を誓う。
姉の死から一年後、ふとしたことから、犯人の男と琴音は出会うことになる。
複数の歩きスマホの加害者と被害者。
歩きスマホに理解を示す人と憎悪する人。
それらの人々が交差するとき、運命の歯車は回り出す。
大手の優良企業に勤めていた杉田敏夫。
将来安泰を信じていた敏夫の期待は、バブルが弾けた時から裏切られた。家のローンが払えず早期退職の募集に応募するも、転職活動がうまくいかず、その頃から敏夫は荒れて、家族に当たるようになった。
そんな時、敏夫は不思議な体験をする。
幻のようなマッサージ店で、文字のポイントカードをもらう。
そこに書かれた文字の意味を理解する度に、敏夫は変わってゆく。
すべての文字を理解して、敏夫は新しい人生を送れるのか?
敏夫の運命の歯車は、幻のマッサージ店から回り出す。
夜の世界に慣れていない、ひたむきで純粋ながら熱い心を持つ真(まこと)と、バツ一で夜の世界のプロの実桜(みお)が出会い、お互い惹かれあっていきながらも、立場の違いから心の葛藤を繰り返し、衝突しながら本当の恋に目覚めてゆく、リアルにありそうでいて、現実ではそうそうあり得ない、ファンタジーな物語。
ふとしたことから知り合った、中堅の会社に勤める健一と、売れない劇団員の麗の、恋の行方は?
会社が倒産し、自棄になっていた男の前に現れた一匹の黒い仔猫。
無二の友との出会い、予期せぬ人との再会。
その仔猫を拾ったことから、男の人生は変わっていった。
小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。
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